都鄙図巻
住吉具慶筆
とひずかん
正月の公家屋敷に始まり、軒を連ねる店屋、庭園や矢場を備えた武家、職人たちの町並み、野山での紅葉狩り、雁や鴨が飛び交う水辺に刈田と、めぐりゆく季節の中で人々の営みがこまやかに描き出されている。都市から農村にいたるまで、そこに生きる人々の豊かな暮らしぶりを、順を追って眺められるように配慮されている。
落款から、幕府の御用絵師・住吉具慶(ぐけい/1631~1705)の晩年作とわかる。5代将軍徳川綱吉によって奈良の尼門跡寺院である興福院(こんぶいん)に寄進された。描かれた都市と農村の繁栄は善政あっての賜物であり、綱吉を為政者として讃えるような思惑が読み取れる。
(会期中巻き替えあり)
【江戸時代 17-18世紀 奈良・興福院蔵 奈良市指定文化財】