重要文化財
湯女図 ゆなず
「湯女図」の名は、左から二人目の小袖に篆書体(てんしょたい)の「沐(もく)」の字があることに由来する。「沐」は洗う、髪を洗うという意味の字で、風呂屋で客の世話や接待をした湯女に通じる。しかし、彼女たちには湯女という苦界に身を堕した悲嘆や後ろめたさはなく、斬新な小袖をまとった張りのある姿形には、時代の最先端を闊歩するという姿勢すらうかがえる。三人が大きく後ろを振向くことから、その視線の先に彼女たちに言い寄る男性たち、もしくは反目する吉原の遊女たちなど別の集団が描かれていたとみられている。中央の女性の姿形は、脱俗的イメージを伴う中国の僧・寒山に重なるとの指摘があり、当世風の風俗描写にとどまらない表現の奥深さが本図の魅力である。
展示期間:2023年9月24日(日)~10月15日(日)
【江戸時代 17世紀 静岡・MOA美術館蔵】