田中訥言書状
源八・文吉宛
たなかとつげんしょじょう
げんぱち・ぶんきちあて
「近年の珍事、土産話に」
江戸時代後期の画家・田中訥言が源八と文吉に宛てた書状です。前日、二人と遊郭(ゆうかく)と思しきところに遊び、両者が帰った後のエピソードを伝えています。訥言の相手をしに来た娘のともし油の匂いがきつく、残肴(ざんこう)にたかる蝿(はえ)を追い払う娘の様子がまるで犬のようで恐ろしかったったため、訥言は早々に旅宿に帰り、茶漬けを食べて寝てしまったといいます。「近年ノ珍事」で土産話になりそうだと面白がっており、訥言の茶目っ気が窺えます。絵文字が多用され、また「障子サラサラ」「茶つけさらさら」など擬態語が交じった文章が特徴的です。
【江戸時代 文政元年(1818) 徳川美術館蔵】