時雨螺鈿鞍

国宝

時雨螺鈿鞍 しぐれらでんくら

松の葉と蔦が強い雨風に煽られ靡(なび)く情景が、夜光貝(やこうがい)を剥出(はぎだし)法で装着してあらわされています。前輪に「時雨」「染尓(に)」、後輪(しずわ)に「時雨」「王可(わか)」「恋」「原」の文字が図柄の中に配されています。これらの文字は、正治2年(1200)に後鳥羽院の下命で詠進された慈円(じえん)の「わが恋は松を時雨のそめかねて 真葛(まくず)が原に風さわぐなり」(『新古今和歌集』恋歌一)の一部です。肥後熊本の大名・細川家に伝来した、鎌倉時代を代表する鞍の名品です。

【鎌倉時代 13世紀 永青文庫蔵】