初音蒔絵櫛箱

国宝

初音蒔絵櫛箱 はつねまきえくしばこ

初音の調度の名は、『源氏物語』の「初音」の帖「年月を松にひかれてふる人に今日鴬の初音きかせよ」の歌意を全体の意匠とし、その歌の文字を葦手書きに散らしているところに由来している。
この初音の調度は、寛永16年(1639)9月22日、3代将軍家光(いえみつ)の・娘千代姫(ちよひめ)が、尾張徳川家2代光友(みつとも)に婚嫁する際持参した調度で、室町時代以来の蒔絵師である幸阿弥家(こうあみけ)10代の長重(ちょうじゅう)が製作に当った。
櫛箱は、髪に関わる第一の化粧道具であり、櫛をはじめ整髪用の道具が収められる箱である。本品の蓋表は、畳紙(たとうがみ)の折形が象(かたど)られている。櫛は多くの場合、櫛の歯に精粗が三種類あり、これを三ツ櫛という。目の粗いものは髪を梳(くしけず)るため、目の細かいものは髪の垢などを落とすために用いられた。

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【江戸時代 寛永16年<1639>】