徳川家康画像(東照大権現像) とくがわいえやすがぞう(とうしょうだいごんげんぞう)
「東照大権現」として神格化された家康の神影である。山王一実神道(さんのういちじつしんとう)の立場で家康の神格化を主導した天海は、東照大権現信仰を高めるため、天海麾下(きか)の絵仏師木村了琢(きむらりょうたく)や神田宗庭(そうてい)らに、東照大権現像を多数作らせた。多くの東照大権現像は、御簾(みす)の下に御帳(みちょう)を絞り上げ、繧繝縁(うんげんべり)の上畳(あげたたみ)に束帯姿の家康が座し、手前には阿吽(あうん)の狛犬一対が描かれている。本図の像容もこの定式に従っているものの、袍(ほう)の裾(すそ)が向かって右方向へ捌かれ、足の裏を合わせない東照大権現の図様は珍しく、関東の天台宗寺院に伝わる東照大権現像と一致している。本図はもと天台宗寺院に伝わったか、あるいは天台宗寺院で製作された図様を参考に描かれたと見なせる。
【江戸時代 17世紀】
作者:伝狩野探幽筆
徳川宗春(尾張家7代)所用
紙本著色
本紙 縦89.7 横38.8