法華経普門品

重要文化財

法華経普門品 ほけきょうふもんぼん

平安時代後期には、末法到来の思想を背景に浄土思想や法華経信仰が宮廷貴族たちの間に浸透するようになりました。特に現世利益・悪人往生・女人往生を説く『法華経』に対する信仰は篤く、写経の功徳を積極的に説いているため数多く書写され、善美を尽くした華麗な荘厳がこらされました。本巻もその遺例で、『法華経』第25章にあたる「普門品」(「観音経」とも)が書写されています。表紙・見返・経の天地にいたるまで装飾がこらされ、金截金による界罫線を引き、まろやかな和様の書体で書写された経文が見どころです。見返絵には観音力によって災難からのがれうるというたとえのうち、水難、すなわち経中の「波浪不能没」の情景が描かれています。

【平安時代 12世紀】

彩牋墨書
一巻
縦25.0 全長260.0

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